相続例

相続例 その5
納税資金の検討が必要なケース

田舎に残っている親についての相談です。


私は現在、親元を離れて生活しています。こちらで結婚し、子供もおりますので田舎に残っている親元に帰る予定はありません。なお、父は早くに亡くなっており、今は母が一人で住んでいる状況です。


私は、できれば母にこちらに来てもらい同居(家は旦那名義の一軒家です)したいのですが、母は田舎に住み続けることを望んでいます。母の人生なのでどちらでも良いとは思うのですが、母が住んでいる不動産に関する税金が気になっています。


もし相続税が多額に発生するようであれば対策が必要かなと思う一方、相続が発生してから不動産を売却した方が有利という話も聞いたことがあります。


不動産の評価額は土地が6,000万円で、建物はほとんど価値がなくゼロと考えてもらって結構です。預貯金はほとんどなく、私が母に対して仕送りをしているような状態です。なお、母が亡くなったとした場合の相続人は私だけです。どのようにするのが、税金上は一番有利なのでしょうか?

ご質問の内容ですと、このまま田舎のお母様の相続が発生した場合には小規模宅地の特例が適用できず、相続税が発生すると思われます。ここで問題となるのは、相続税の納税資金をどのように手当てするか、ということです。相続税は現金による一括納付が原則となっておりますので、相続税額に相当する現金を用意する必要があります。


そこで、納税資金の確保のため、土地を売却するという方法が考えられます。土地を売却した場合、お母様に所得税と住民税の納税義務が発生します。また、その分だけ財産が減少することになりますので、相続税が減少します。

土地の売却に係る税金の計算

所得税と住民税は、売却価額からその土地の取得価額を差し引いた残額の20%です。
土地の取得価額が問題となりますが、とりあえず取得価額が不明として、売却価額の5%を取得価額として計算します。また、評価額の6,000万円で売却できるとして計算します。


この場合の所得税と住民税の額は、
(6,000万円-6,000万円×5%)×20%=1,140万円
になります。

相続税額の計算

所得税等を納税すると、その分だけ財産が減少することになります。具体的には、相続財産は6,000万円-1,140万円=4,860万円の預金だけということになります。

  1. STEP.1

    相続財産が4,860万円、基礎控除が3,000万円+600万円×1人=3,600万円ですので、相続財産から基礎控除を差し引いた差引額は1,260万円になります。

  2. STEP.2

    1,260万円に対する相続税額は、1,260万円×15%-50万円=139万円です。

トータルの税額は所得税・住民税1,140万円+相続税139万円=1,279万円となります。

先に相続税を確定させ、その後に土地を売却するという発想です。この場合、土地の譲渡に係る所得税や住民税を減少させることができます。相続税は土地の売却代金で納付することになりますが、予定通りに土地が売れなかった場合に相続資金が手当てできない、というリスクもあります。

相続税額の計算

相続財産は、土地の6,000万円だけとなります。

  1. STEP.1

    相続財産が6,000万円、基礎控除が3,000万円+600万円×1人=3,600万円ですので、相続財産から基礎控除を差し引いた差引額は2,400万円になります。

  2. STEP.2

    2,400万円に対する相続税額は、2,400万円×15%-50万円=310万円です。

土地の売却に係る税金の計算

所得税と住民税は、売却価額からその土地の取得価額を差し引いた残額の20%ですが、相続税が課せられた土地を売却した場合には、その相続税を取得価額に加算できるという制度があります。ご質問のケースでは、310万円が取得価額に加算されます。


この場合の所得税と住民税の額は、
(6,000万円-6,000万円×5%-310万円)×20%=1,078万円
になります。


トータルの税額は所得税・住民税1,078万円+相続税310万円=1,388万円となります。

計算結果のまとめ

  所得税・住民税 相続税 税金の合計
相続前に土地を売却 1,140万円 139万円 1,279万円
相続後に土地を売却 1,078万円 310万円 1,388万円

このように、ご質問のケースでは相続前に土地を譲渡した方が有利となります。実際の相続税対策は、これ以外に生命保険や生前贈与の活用などが考えられますので、この計算結果は譲渡のタイミングのご参考としてご利用ください。

参考:相続税の速算表

相続税の計算には以下の速算表を利用します。この速算表で計算した法定相続人ごとの税額を合計したものが相続税の総額になります。

法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10% -
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

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